探しものの理由

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 久しぶりの休日。  オレがリビングのソファでくつろいでいると妻がやってきて、タンスを開け、中のものを調べ始めた。 「あれ……? どこにいったのかしら?」  何かを探しているらしい。しかも急ぎの用事のようだ。 「何だい? 何か探してるの?」  オレが聞くと妻は真面目な顔で答えた。 「指輪よ、指輪。私たちが付き合い始めて最初の誕生日にあなたが買ってくれたやつ」  そういえばそんなことがあったなあ。 「でも、どうして今必要なんだい?」 「うーん、理由はわかんないけど。急に思い出したのよね」 「探しものなんてやめて一緒にテレビでも観ない? もうすぐお笑い番組始まるよ」  急に興味を持った顔つきになる妻。 「え? 誰が出るの?」 「君の好きな漫才師、出るらしいよ。ほら、若い男女のコンビ」 「じゃあ、一緒に観ようかしら」  妻はオレの隣に座った。  やがてお笑い番組が始まった。  最初は老年の夫婦漫才からだった。  あははは。面白い。やっぱりベテランは違うな。  妻も笑っている。いっしょに笑うのは気持ちがいいものだ。  次は妻の好きな漫才師『ロケット探偵団』。  若手実力派といわれるだけある。
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