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「部室の鍵、かけといてって言われて預かったよ」
そう言って銀色の鍵を見せて来たのはイツキだった。
ゲームに熱中している間に、先輩に託されたみたいだ。
「まだ体験入部なのに施錠を任されるなんて、イツキやるな」
イクヤがイツキの背中を叩いて笑った。
あたしたちが熱中しすぎていたから、先輩たちに気を使わせてしまったのかもしれない。
「良いこと考えた!」
途端に大きな声で言ってイツキから鍵を奪い取ったのはカズヤだった。
「良い事ってなに?」
質問をしながらも、カズヤの考えることに良い事があったためしがないと気が付いていた。
どうせまた、くだらないことなんだろう。
「この鍵のスペアを作るんだ。そうすれば水曜日でもゲームができる」
カズヤの持っている鍵が蛍光灯に照らされてキラキラと輝いて見えた。
毎日ゲームができれば、そりゃあ楽しいけれど……。
思わずカズヤの意見に流されてしまいそうになり、あたしは左右に首を振った。
「……ダメだよ。そんなことしちゃあ」
反対意見を言ってみたけれど、自分の声が信じられないくらい小さくなっていた。
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