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葬儀の後には、祖母を慕った人達が集まり夜遅くまで思い出話に花が咲いた。
祖母は昔からこの小さい町のみんなのおばあちゃんとして相談毎から子供たち、孫達の子守りなどとても頼りにされていた。
翌朝、母と私は台所で昨夜の後片付けをしながら私は父が言っていたことについて考えていた。
「楓夏、あんた明日の夜までに帰れば良かったのよね??
ほんとすぐ帰ってきてくれて助かったわ。隣組の皆さんとか手伝ってくれるって言ってもね。」
「ううん、丁度有給も消化しないといけないのがあったし、それにようやく時間的にも余裕が出来た時期だったから。
あ、あのさ・・・おばあちゃん本当に心臓発作だったの??」
隣にいた母の肩がビクっとしたのを感じた。
何も言葉を発しない母の様子を見ると、一点を見つめ煮え切れられない表情をしていた。
「あんたにはちゃんと言っておかないといけないと思ってたけど・・・。
きっと今がその時なのね。」
母のその言葉に小さい頃に祖母と一緒に行った『誉』さんとたまに夢に出てくる光景が浮かんだ。
小さい時の『誉』さんは、大勢の人に慕われ子供達にとっても憩いの場だった。
森と森の間にある小径を進み、小高い丘の中腹にあるちょっとした開けた場所。その端っこにある小さな祠。
その祠の側には町の集会所があった。
何かあるたびにそこに人々が集まり、町の決めごとを決めたり、夏休み中には大人達が変わる代わりやってきて町の子供達の勉強を見たり、虫取りに連れて行ったり。
みんなにとって頼りになる場であり、町の人を見守ってきたのがこの『誉』さんだった。
ところが私が小学校高学年になったときに、突然『誉』さんに行くのが禁止になったのである。
もちろん子供だった私達にとってもかけがえのない場所だった『誉』さんへ行けなくなったのは悲しかった。
最初の頃は、親を含め大人たちに尋ねていたが肝心の大人達は口閉じ一切理由を言わない。それがかえって子供達を刺激したのか?こっそり行ってみたりするものも現れた。
そうしていくうちに実は殺人事件があったとか、祠の側にある井戸に女の子が落ちてその子のお化けが出るや、『誉』さんが罰を与え始めたなどの噂が出始めた。
だが、子供と言うのはすぐに別の場を探し出してしまう不思議な力がある。時折、こっそり『誉』さんに行く者もいたようだが町の人達から『誉』さんの存在は徐々に薄れていった。
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