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いち
「ねぇ、ママ。門のむこうにおんなのひと、いるよ? ちいさいこもいる」
「奈々ちゃんのママたちかな? 準備しなきゃ」
2年前に越してきた建て売りの我が家は、テレビのあるリビングから門扉が見える。
インターホンを押す前に誰がいるのかわかるので、結構便利だ。
娘の愛美は窓から外を見て、誰か来ると得意気に教えてくれる、ちょっとおませな女の子だ。
今日はママ友である、奈々ちゃんママが子供連れで遊びに来ることになっている。
私はエプロンを外すと髪をさっと整え、玄関に向かった。そろそろインターホンを押す頃合いだ。
「あーもう、こんなに脱ぎ散らかして!」
まばらに抜き散らかされた家族の靴を片側に寄せ、お客様が靴を脱げるスペースを確保しながら、玄関の扉を開けた。
「いらっしゃーい!」
インターホンの音はまだ聞こえてこなかったが、一番仲良しの奈々ちゃんママだ。真っ先に出向かけてあげたい。インターホンを鳴らす前に開けたら少し驚くかもしれないけど、悪い気はしないだろう。お互い悩み事から日々の生活のことまで、何でも話し合う仲なのだから。
「あれ? いない」
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