見つめる先には

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「あなたの知り合いって、ほんとにこの家の人? 人違いじゃないかしら」 「え? どうしてですか?」  知り合いではないと看破されてドキリとする。何か言動で不審な部分があったのか?  動揺してつい強い口調で問い返すと、疑ったことに対して怒ったと勘違いしたのか、女性は慌てて弁明する。 「いえね。あなたが嘘を言ってるとか、そうじゃなくてね。彼女」 ーー亡くなったのはもう何日も前らしいのよ 「は」  発せられた言葉に、俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。それは……どういうことだ? 「随分、腐敗が進んでいたみたいでね。ひと目で亡くなってから、かなり時間が経っているのが分かったらしいわ。私も直接見たわけじゃないんだけど。話を聞いただけで気分が悪くなってしまったもの。それだけ酷かったのよ」 「そんな」  じゃあ、俺が今朝見た彼女は? 夢か幻なのか? そんなはずはない。確かにこの目で。  いや。  あれは、彼女の死体だったのか。首を吊って亡くなったという話だ。窓辺でぶら下って、離れたホームからだと、それが立っているように見えたのか。  俺はずっと死んだ彼女を見ていたのか。
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