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「えー!男が妊娠とかありえねーじゃん!」
「だいたいドラゴンとか何時の時代だよ」
本を閉じれば俺の読み聞かせを聞いていた男子高校生達が文句を言ってくる。庭付きの洋館の一室で、高校生数人に読み聞かせてやったのだが、気に入らないらしい。
最初に迷子になって迷い込んだ高校生の女子達に本屋に無い本を読み聞かせた事が広まり、今では大人達も聞きに来ることがあるがやはり皆同じく本の中の物語だと笑う。
「まぁ…ドラゴンなんて今はもう見ないもんな」
俺が笑いかければそうだそうだと言ってくる。日も暮れてきたので高校生達はまたねと言って帰っていく。俺は手元にあった本を本棚へ戻す。
外では賑やかな声が聞こえてきて窓から見れば、青年と高校生達がすれ違って何やら楽しそうに話している。青年はマスクをつけていて、買い物袋をもっている。
玄関へ向かって扉を開ければ高校生達に手を振って青年が歩いてきた。扉を背にして閉めた青年は楽しそうに笑う。
「ドラゴンなんて居ねーよだってさ」
「見たことないから仕方ないよ」
俺が微笑めばそれもそうかと笑い荷物を台所の卓上へ置き、姫抱きをされてベッドへ降ろされる。この話を聞かせた日は必ず体を重ねる。
青年がマスクをずらせばギザついている歯が見え、俺の腹の紋様を愛おしそうに撫でてきた。
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