幼なじみと見えないペット

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 休日の過ごし方は、大体2通り。家族サービスか、ともん家で遊ぶかだ。  バレーバカだって言われる俺でも、人並みにゲームもしたい。だけど、家でスマホを触ろうものなら、妹達が即座に飛んでくる。動画見たいとか、ゲームしたいとか。部活や友達との連絡用に持たせてもらってるていなので、家でゲームなんか全く出来ない。唯一出来る場所は、ともの家だ。  今日はともん家で、ゲームを楽しもうと思って来たのに、部屋に入ってともが出したのは、スマホではなく小さなボール。 「ほら見て! ハチとボール遊びが出来るようになったんだよ!」 「そうか……」  ドアに背中を付けてしゃがみ、反対側に向かってコロコロとボールを転がす。ボールは机に届く前に止まった。 「ほら! ハチがボールを止めたんだよ! すごいでしょ?」 「そう……か?」  俺には、何が凄いのか分からない。ともは、ハチがボールを止めたと言い切ってるけど、単に勢いがなくなって止まっただけにしか見えない。しかも、止まったボールは自分で拾いに行く始末。 「ハチが持って来ないのか?」 「まだ物を動かせないんだ。最近やっと、ボールの勢いを止められるようになっただけ」  そう言うと、また同じように転がした。 「ハチ、すごいね! 賢いね!」  ともはいつか見た崩れ切った笑顔を浮かべて、虚空を撫でる。見えない子犬がそこにいるだろうことは分かったけど、それだけだ。ともの話を疑ってはいないけど、実際に存在を感じられなければ、それはいないのと同じだ。神山ん家ぐらい存在感あったら、俺にも少しは感じられるのになと、残念に思う。 「なあ、ゲームやんね? 俺のレベル上げに付き合ってよ」  見えない子犬の相手より、俺はゲームがしたい。ともにも、ゲームの相手をして欲しいと、スマホを持った手をひらひら振ってアピールしてみる。 「そうだったね。もちろん、付き合うよ」  そう言いつつ、ともはスマホゲームをやりながらボールを投げては、見えない子犬に話しかけるのをやめない。  俺はそんなともと、見えない子犬がちょっとだけ気に入らなかった。
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