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真新しい墓石の前にしゃがみ込み、石に彫られた文字を見つめても、あのキラキラした笑顔も、透き通るような歌声も、そこにはない。
生きているところをちょん切られたアイツに似てるこの花を、生きているところを踏み潰され死んだアイツに捧げる。
皮肉なものだ。
あの日、全てを持っているアイツの未来を覗き見た気がして感じた嫉妬を今でもはっきりと覚えている。
十七になるころには、アイツはあたしが欲しかったものを努力もせず、最も簡単に手にしているはずだった。
でも実際に訪れた未来は、何かを手に入れる努力をすることすら赦さない。
皮肉なものだ。
あたしの方がアイツよりずっと死に近かったはずなのに。
あんなに輝いていて生に満ちていたアイツは全てを失った。
アイツは私に嫉妬をしたりするのだろうか。
――いや、それすらも赦されない。
百箇日法要をようやく終えたところだと聞いた。
アイツが守るといった「妹」に想いを馳せる。
「――気が向いたら見ててやるよ、お前の妹」
蒼白い、それこそ死んだ様な目をした少女を脳裏に映す。
守る、なんて大それたことはできやしない。
でも見ててやるくらいなら、してもいい。
「だからさ、まあ、ゆっくり休めよ」
熱い熱が頬を掠める。
向日葵の花が風にそよいだ――。
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