7.ごめんなさい

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7.ごめんなさい

 船長が自室に戻ると、部屋の前でミナギが待っていた。なぜかあの少女と手を繋いでいる。  嫌な予感がしたが他に行く所もなく、船長は無言で二人の前に歩み寄った。 「はい、船長」  彼は差し出された小さな手を見下ろした。 「なんだ」 「なんだじゃないですよ」  ミナギは船長が少女の手を取らないのを見て、仕方なく彼女の背を優しく押した。 「こんな知らない場所で独りで寝かすなんて可哀想じゃないですか。物凄く怯えていたの、船長も覚えてるでしょう?」 「だからと言って私に渡すな。他にその役を担いたい者はいくらでもいるだろう」 「みんなこの子に逃げられました。やっぱりあなたがいいんですよ」 「知るか。私にはまだ仕事がある」  船長の木で鼻を括ったような物言いはいつものことながら、あまりの融通の利かなさにミナギがムッと顔を顰める。もういいですと言わんばかりに背を向け、少女を船長室へ誘った。 「さ、ここにいていいよ。船長さんに何かお話してもらいな」 「ミナギ。勝手なことをするな」 「それじゃ、この子のことを頼みましたよ。ちゃんと面倒見てあげてくださいね」  急いで船長が止めに入るが、ミナギは反抗的に睨み付けて、さっさとその場を立ち去ってしまった。  ズボンから伝わる小さな違和感に視線を下す。あの少女がおずおずと彼の服を掴んでいた。こちらを見上げる青い眼差しは控えめながら、一緒にいたいのだと確かに訴えてくる。  だが。  藍色の男は頑なに、それを理解しようとはしなかった。 「……一人で眠れるな?」  少女は大きな瞳を悲しげに曇らせたが。  小さく頷いた。 「怖ければ部屋に鍵を掛ければいい。鍵は私とミナギが預かっている。誰も不用意に部屋を訪れたりはしない」  それは彼なりの気遣いだった――少女が求めているものに適うかは別の話だけれど。  彼は少女の背を押し、廊下へと追い出した。  締まる扉の隙間から見えた少女の顔は俯いていた。
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