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「これ以上は釘の持ち合わせが無くてね。だが、幸いにも抜けば使い回せる」
「いっ、嫌だ! やめてくれ……っ、もう嫌だああぁぁ!」
そして、もう一本。
絶叫がこだまする。
もう空になったかと思われた膀胱から、また新たに小便が溢れた。
「……なあ、ルーカ」
ロレンツォは震える青年の肩を抱いた。
「お前は十分よくやったよ。だけどな、お前がこうしてつらい拷問に耐えている間、サヴェリオのオヤジさんはもう土の中でスヤスヤ眠ってるんだ。理不尽だと思わないか? 俺はお前に同情しているんだ、カーロ」
ルカの返事はない。
ひたすら嗚咽が漏れていた。
「俺を信じられないのは無理もない。ただ、私怨を捨てて、もう一度考え直してみないか――お嬢ちゃんのことを。サヴェリオの願いはあのお嬢ちゃんを守ること、だったんだろう?」
ロレンツォは親身な声で続ける。
「考えてもみろ。お前がこんな所に連れて来たせいで、あのお嬢ちゃんは見知らぬ土地で独りぼっちだ。この後どうやって生きていくんだろうなぁ? 親切な誰かが保護して施設にでも送ってくれるか……遺産を狙う他の悪党に目を付けられるか。それとも、性癖の歪んだ糞ペド野郎に捕まるか……」
ルカの顔が更に血の気を失って蒼褪めていく。開いた目が必死でロレンツォの横顔を追い求めた。
「それ、は……」
「考えてなかったのか? ったく、若いのは先走っていけねぇ」
ロレンツォは言う。
「俺はな、ルーカ。あのお嬢ちゃんには何の恨みもないんだ。当然だろう? 今までサヴェリオに尽くしてきた、その見返りがほしい。それだけだ。遺産さえこっちに渡してもらえれば、あのお嬢ちゃんをどうこうしようなんざ思っちゃいないのさぁ」
ルカは痛みで言葉も出なかったが、目でその真偽を問うた。ロレンツォが頷く。
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