3.奇妙な乗客

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 廊下は人がすれ違うのにやっとの幅しかないので、一人ずつ順番にベッドの下を覗き込むという奇妙な行列ができてしまった。謎の少女はベッドの下で身を縮めたきり、次々と現れる日焼けた男たちの顔に怯え切っていた。 「誰もこの子のことを知らないのか?」  ミナギが問う。  集まった船員たちは顔を見合わせ、首を振った。 「モーリスの隠し子じゃねえの?」 「馬鹿。オレの面を見て言え。オレからこんな可愛い子が生まれると思うか?」 「あ、マジだわ。ごめん」 「間違って入って来たとか? そんなことあるかねぇ」 「もう船長には知らせたのか? あと確認してないのは船長だけだろ」 「誰も知らないなら迷子ってことになるが……なあ、この子なんで喋らねぇんだ?」  船員たちが口々に言う。  子供の扱いに自信があると名乗り出た何人かが話し掛けてみるが、玉砕。少女は無言で首を振るだけだった。 「耳が聞こえない……わけじゃなさそうだよな。言葉がわからないとか?」  またいくつかの言語で同じ問いが繰り返される。やはり結果は同じだった。 「とにかく、いつまでもベッドの下ってわけにゃいかねぇよ。船長のところに連れて行こう」  乗組員の中ではリーダー格のジャンルカが痺れを切らす。彼はズカズカと船室に入り、ベッドの下に腕を突っ込んだ。 「おいっ! 乱暴するなよ!」  ミナギが声を荒げて止めに掛かるが、既に彼は少女の服を掴んで引き寄せようとしていた。 「自分から出て来ねぇんだから仕方ねえだろ――テオドゥロ、そっちから引っ張り出してくれ。これ以上手が届かん」  名指しされたテオドゥロが躊躇いがちにベッドの反対側に回り込む。  少女は小さな抵抗を見せたようだが、当然船乗りの腕力に敵うはずもなく。あっさりと引き摺りだされてしまった。
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