3.奇妙な乗客

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 改めて見ると、その少女はかなりの器量よしであることがわかった。  白金色のトゥヘッドに、青い大きな瞳。今は恐怖で見開かれているけれど、白目と黒目ははっきりとしたコントラストを持ち、二重瞼を遮るように睫毛が天を向いている。ふっくらとした幼女らしい輪郭とは対照的に、桃色の唇は綺麗な三日月を描いていた。 「あらら。こりゃあ美人だ」  ジャンルカが腰を屈めて覗き込む。ニカッと笑う武骨な顔は照り付ける太陽を思わせるが、幼い少女には恐怖の対象でしかない。少女はますますきつく鞄を抱き締めた。 「モーリスの隠し子って線は消えたな」 「お? まだ言うか?」  今度はテオドゥロが少女に優しく微笑み掛ける。 「無理矢理してごめんなぁ。痛くなかったか?」  残念ながら、少女にとって髭面はもっと怖い。武骨な太陽と生い茂る髭面に挟まれ、少女はいよいよ泣きそうな顔になる。 「おいおい、泣くな泣くな。やっぱり言葉がわかんねぇと困るなあ……船長はまだか?」  まさに彼らの求めに答えるかのように、足音が廊下の奥から響いてきた。人垣が割れ、藍色の長身がぬっと扉を潜って現れる。 「あ、船長」 〈アヒブドゥニア〉号の船長は船員たちに囲まれながら、首すら動かさないまま目の前の『異物』を見下ろした。 「……なんだこれは」 「なんだ、じゃないですよ。女の子です」 「見ればわかる」  ミナギはムッとしながら事情を説明した。 「――と言うわけで、誰も心当たりがないんです。言葉もわからないみたいで。船長、ちょっとこの子から色々聞き出してもらえませんか?」  船長は青い目をずり動かしてミナギを見た。 「なんで私が」 「だって、あなたは全自動翻訳機搭載してるでしょう」  ミナギはぐいと船長を少女の前に押しやり、退路を塞ぐように彼の後ろに回った。  謎の少女は床にスカートを広げ、怯える瞳で彼を見上げている。船長は遥か高みの長身から威圧的な問いを降らせた。 「……名前は」
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