20.ルチアの親権

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「これは……どこだ?」 「地中海に浮かぶ離島だ」 「はあ? 別荘でも建てろってか?」 「次からの書類を見てみろ」  マルコは言われるがまま書類を読み始める。が、見る見るうちに眉間に皺が寄り、瞬きの回数が増えていった。船長は彼に自力で理解させることを諦めた。 「その島にはサヴェリオが密かに造った酒造場がある。一切公にはしておらず、当然ながら法的許可も取得していない」 「それって……酒の密造?」  オリヴィエが目を丸くする。船長は頷いた。 「マルコ、お前には密造酒で細々と食い繋いでいく程度がお似合いだ。流通の伝手がなければ〈アヒブドゥニア〉が請け負おう。商売が軌道に乗るまでは私が面倒を見てやる」  マルコはまたガラリと表情を変え。  今度こそ感謝感激愛情たっぷりの弾ける笑顔と共に両手を広げる。ミナギが阻止しようと立ちはだかったが、それを突き飛ばして異母妹ごと船長を抱きすくめた。 「最高だぜ(ブラビッシモ)、カピターノ! 愛してるぜ!」 「私は愛していない。離せ」  熱烈な接吻まで迫ったが、船長に拒絶され、ミナギに首を絞められ、ルチアにすら嫌悪を示されて失敗に終わった。  ミナギの制裁によってマルコのテンションを落ち着かせると、再度オリヴィエが口を開く。 「盛り上がってるところ悪いけどね……解決していないことがもう一つあるだろう?」 「なんだ」 「ルチアの親権さ。この子はこれからどうするんだい?」 「それはもちろん、カピターノが引き取るんだろ?」  船長は小さく否定した。 「いや……私には戸籍がないから、養子に取ることはできない」 「それじゃあ、やっぱり孤児院にいれるのかい?」  ところが、船長はこれにも首を振る。 「それについては考えがある」  マルコとオリヴィエはきょとんとしていたが。  どことなく嫌そうな船長の様子を見て、ミナギだけがその方法に気が付いていた。
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