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その数日後のことだった。
いつものように大通りを渡ろうと信号を待つ女性と子供の背後に、僕はこっそりと立った。
すると、ブレーキが壊れたかのような猛スピードで走る一台の車がぐんぐんと近づいてくる。
その時、僕は背後から強烈な力で突き飛ばされた。
思わず前につんのめる僕の体が、今度はその前にいる女性と子供とを、車道に向かって突き飛ばす。
僕はバランスを崩したまま、背後を振り返る。
そこには、笑みを浮かべた相棒が立っていた。
「何すんだよお前……」
思わず叫びながら僕は、女性と子供のほうへと振り向く。
2人は突然の出来事に、路上で転んだきり、硬直したまま動けずにいた。
僕は無意識に飛び出していた。路上の2人を、さらに遠くへと、車道の向こうへと突き飛ばす。
次の瞬間。
僕は強烈な衝撃に宙を舞った。しかしそれはどこか、懐かしいような感覚だった。
高速で突っ込んできた車のあまりの衝撃に、一瞬で意識が刈り取られる間際、僕はすべてを思い出したのだった。
そうだ、あの女性と子供は、生前僕が誤って、車でひき殺してしまった親子。
そして罪の意識にさいなまれた僕は、それからほどなくして、車道に飛び込んで自殺したのだった。
僕が目を覚ましたのは、天国の役所の中だった。
「おめでとうございます、試験は合格です」
僕はまだ頭が少しぼうっとしていた。
しかし体には傷ひとつなく、僕はしっかりとイスに腰掛け、担当者の向いに座っている。
僕にはまだ事情がよく呑み込めない。
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