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「なるほどもっと若い方がいいですか。それでは例えば……」
「ちょっと待って。あ、あの人なんか良さそうじゃない」
女が指し示したのは、まだ学生くらいの若い男だった。
「あの方ですか。ではさっそく」
しかし、悪魔がその男に向かって弓を放とうとしたとき、女が手を振ってそれを制止した。
「それもちょっと待って。私あの人に話しかけてみる」
女はそう言うと、その若い男の方へ歩み寄って言って何やら立ち話を始めた。
二人は数分の間そのようにしていたが、そのうちにいかにも楽しそうに談笑しながら近くのカフェの中に入って行った。
女は悪魔の後ろ盾があるのに勢いを得て普段ではあり得ないほど大胆だった。しかし、男の方も満更ではない様子であった。
二人はカフェの中で話し込んですっかり意気投合してしまって、またそのうちに会う約束も取り交わした。
「一体私の出番はいつ頃ですかね」
悪魔が少し不安げに尋ねた。
「今はいいのよ。とりあえずうまくいっているうちはいらない」
実際女はその若い男と非常にうまくやった。
二人はまた何度かあって食事をしたのちに一緒に住むようになった。
そして、そのまま数年の月日が流れて、女はついに彼との結婚を考えるようになったのだ。
あの悪魔のことはすっかり忘れてしまっていた。
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