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しかし、いざ結婚を現実的に考えるにあたって不安がないわけではなかった。
男は何故だか帰りが非常に遅くなるようになったのだ。
それも数日のことではなく、ここ最近はいつもそうだった。
理由を聞いても何故だかはっきり答えない。
「どうして最近ずっと帰りが遅いわけ」
「そりゃ……仕事が遅くなったりとか。色々あるからね」
「仕事ってそんなにいつも忙しいものなの」
「……」
それに、この頃男ははいつも浮かない顔をしていた。
まるで女と一緒にいることが憂鬱の原因であるというふうだった。
それで、彼女はだんだん嫌な予感がしてきた。
以前に同じような経験をしていたせいで察しが良かったのだ。
ある日、男は少し出かけてくるとだけ言って家を出た。
そして、いつもは絶対に肌見放さず身につけているはずの携帯電話をどういうわけかその日は忘れていった。
女はそれを見つけて拾い上げると、何か落ち着かない様子で誰もいない部屋の中をキョロキョロ見渡して、ウロウロ歩き回った。
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