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街へ
しかし、ついに怒りで理性が焼き切れるその直前、もう記憶の底に沈んでいてた男の顔……あの崖の上で出会った悪魔の顔が彼女の脳裏に浮きあがった。そして、その悪魔の顔が不気味にニヤッと笑ったかと思うとそれが激しい閃きとなって弾けたのだ。
「悪魔さん!今すぐ出てきて!いるんでしょ!?」
女はどこにいるともわからない悪魔に向かって大声で叫んだ。
するとSF映画に出てくる立体映像の如く、あのセールスマン風の悪魔が壁の中からぬっとその姿を表した。
「やっとお呼びですか。もう私の出番はないのかと思いましたよ」
悪魔はまたあの不気味な笑みを浮かべていた。
「さあ!この男の心臓を弓で射抜いて。もう他の女のことなんて忘れてしまうくらいに強烈なやつをお願い」
「お安い御用です」
悪魔は得意げに矢を取り出すとそれを男に向けて放った。
矢はザクっという生々しい音を立てて見事に男の心臓に命中した。
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