富士山の見える山で再開

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週末、三つ峠駅。 8時50分の電車で来るはずなんだけど… お、来た来た。 「お待たせしました。」 「いや、大丈夫だよ。」 とりあえず荷物を乗せて登山口まで車で移動する。 三つ峠駅から登山口まで徒歩で行けなくもないけれど せっかく車で来ているのだから登山口まで行ってしまおうと言う作戦である。 憩いの森登山口に到着して、軽くストレッチ。 トイレは済ませた?OK! 「ああ、そうだ。忘れない内に渡しておくよ」 と紙袋を渡す。 彼女は顔を真っ赤にして受け取る。 「ええと、どういう風に洗ったら良いか分からなかったんでクリーニング屋さんにお願いしたよ。」 「…あ、ありがとうございます?」 うん、これ以上この話題には触れない方が良さそうだな。 いそいそと紙袋をザックにしまう彼女。 さて、じゃあ行きましょうか。 「そう言えばこっちから登るのは初めてだ」 「三つ峠の山は登ったことあるんですよね?」 「うん、御坂峠のほうの登山口からは登ったことがあるのだけど こちらは反対側だからね。 甲府盆地の方から来ると遠回りになっちゃうし」 「そうなんですね」 「そう言えば、登山靴とザック買ったの?」 「ええ、この前は雨に降られたりしたけど、下山してみたら楽しかったかも!って思って一通り揃えちゃいました!」 「と言うことは雨具も買ってある?」 「もちろんです!」 胸を張る彼女。 「登山靴、ザック、雨具は登山の三種の神器と言われる基本装備だけど いっぺんに揃えるなんて結構お金かかったでしょ?」 「いいんです!山ガールになるんです!」 あまり傾斜のない道を歩き20分ほどで達磨石に到着。 そこから2時間ほど森の中を登っていく。 その後、急に視界が開けて崖沿いを歩く場所に出る。 「うわぁ!あんなところに人が居る!」 「ロッククライミングスポットの屏風岩だね」 「こんなところ登って怖くないんですかね?」 「意外と登ってる時は怖くないもんなんだよ」 「へー…そうなんですね!」 「まぁね」 「ん?もしかしてやったことあるんですか?」 「ちょっとだけね」 「落ちちゃったりしたら危険じゃないんですか?」 「太いロープを使ってたり、頑強な金具を使ってたりするから、見た目よりは安全なんだよ」 「でも、怖そうですね…」 屏風岩を抜けると、すぐに山小屋に出る。 「へー!こんな所に山小屋ってあるんですね。」 山小屋の前の休憩スペースで、一休み。 「ここ眺めが良いですね!」 「雲もなく富士山がよく見えるね」 「その内に山小屋泊もしてみたいんですよね」 「いいよねぇ山小屋」 「ちょっと見てきても良いですか?」 「どうぞー、僕はここで休憩してるよ」 「はい」 崖の上に突き出るように設置されているテラスの休憩所で、遮るもののない富士山の景色を眺めつつ スポーツドリンクで喉を潤す。 そうこうしているうちに山小屋を見に行った彼女が帰ってきた。 「どうだった?」 「売店とか料金表とか見てきました。意外と宿泊にお金かかるんですね」 「そりゃあ、ここまで色々持ってくるのに人手がかかるからねぇ」 「なるほど、そうなんですね」 「よし、そろそろ行くかい?あと10分くらいで山頂かな」 「はい!」 山小屋からは見晴らしの良い道が続き、電波塔がいくつか見えてくると頂上だ。 頂上には山頂標識と、三つ峠と刻まれた石碑がある。 そして富士山を臨む絶景である。 ついこの間、山登りを始めて、最初に登った山で終始霧の中を歩いて雨に降られ、ずぶ濡れになったこともある彼女は絶景に声も出ないご様子。 ひとしきり感動を噛み締めてから 「良い景色」 そんなありふれた言葉なんだけど 気持ちはわかるよ。 ここの眺めは最高だもの。 さて、お昼も少し過ぎた辺りだし昼食にしようか。 山頂はそれほど広い場所ではないから何か作って食べるには周りの人の邪魔になってしまうので、各自買ってきた昼食にする。 僕は来る途中で買ってきたコンビニオニギリ二つ、ちなみに梅干しとシャケだ。 彼女のほうはサンドイッチ。 「いただきます」 とオニギリにかぶりつくと 「はい」 と紙コップを差し出された。 受け取って一口飲むとほうじ茶だった。 どうやら保温タンブラーに入れてお茶を持ってきたようだった。 「ありがとう」 「いえいえ」 そういうと彼女もサンドイッチを食べ始める。 簡単な食事でも山の上で食うと格別に美味い。 目の前の絶景があれば尚更だ。 これぞ山登りの醍醐味ってやつかな。
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