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「じゃあ、そろそろ行こうか?」
「はい、よろしくお願いします。」
そのまま高速道路に乗り、大月ジャンクションで中央自動車道に合流して談合坂サービスエリアに到着。
大きなサービスエリアで夕飯の時間帯だけあって、レストランは混雑している。
「夜のサービスエリアでご飯なんて初めてです。」
「こういうのも良いもんだね」
軽く食事を済ませて出てくると
少し車の数が減っていた。
「少し休憩してから出発しようか?」
「そうですね、じゃあ何か飲み物買ってきます。何が良いですか?」
「じゃあコーヒーのブラックで冷たいのが良いな」
「わかりました。」
そう言うと彼女は自販機コーナーの方へ歩いて行った。
しばらくすると帰ってきて
冷たい缶コーヒーを受け取った。
「そう言えばどこまで乗せてけばいいかな?」
「じゃあ、西八王子駅まで良いですか?」
「八王子駅じゃないんだね。」
「はい。」
「後でナビにセットしとくよ。」
「今さらですけど、良かったんですか?」
「うん?」
「送ってくれるの結構距離ありますよね?」
「この間は麓まで送ってあげられなかったしね」
「でも、着替えを借りたり、ご馳走になったりしてますし」
「まぁ、困った時はお互い様ってことで良いよ」
「それにしても…」
言葉を続けようとして黙ってしまった彼女。
「…前にね」
「え?はい」
「何度か登山に行ったりしてるとね、トラブルに遭うこともあるのさ」
「結構、山登り慣れてますよね?」
「いやぁ、慣れてるってのは、その分経験も積んでるけど、失敗もしてるってことなんだよ」
と、苦笑い。
「そうなんですね」
「転んで怪我した時にたまたま近くにいた人に絆創膏をもらった時もあるし、道を間違えてしまった時にたまたま通りかかったオッチャンの軽トラに乗せて行ってもらったこともある。途中でスマホを落っことして後から来た人が届けてくれたなんてこともあるけれど。」
「大体の人が一期一会でその場であったら次に会うことなんてほとんど無いのだけど、たくさんの人に良くしてもらったんだ。」
「だから、まぁ…せっかく同じ山登りキッカケで知り合ったんだし
今まで貰った分をお返ししようと思ってるの…かな」
「私なんかが貰ってしまって良いんですかね?」
「良いのさ。」
「そして、どこかで困っている人が居たら同じように手助けしてあげれば良いんじゃ無いかな?」
「そう言うものですかね?」
「僕は、そういうものだと思ってる。」
「なんか…素敵ですね。そういうの」
「そうかな?」
「そうですよ」
「じゃあ、私も今日の分を誰かに…」
「うん」
「じゃあ、そろそろ行くかい?」
「そうですね」
道中は次に行ってみたい山の話で
盛り上がった。
「でも、三宅さん雨女だからなぁ…」
「それを言われると困りますね」
「そうだ、今度高尾山行きませんか?」
「いいね」
「高尾山だったらウチからの方が近いですから、こっちに遊びに来てくださいよ」
「そうだね」
「絶対ですよ!」
「うん、わかった」
そうこうしているうちに西八王子駅に到着。
「近くまで送って行かなくて大丈夫?」
「ウチ、すぐそこなんで」
「じゃいいか」
「あ、そうそう。すっかり忘れてたんですけど…」
綺麗にラッピングされた袋をもらう。
「コレは?」
「前回、お借りした着替えです。すっかり忘れてました。」
「なーんだ」
「プレゼントかと思っちゃいました?」
「まあね」
「その節はありがとうございました。」
「どう致しまして」
「じゃあ、また!」
「うん、じゃあまた。気をつけてね」
「そちらこそ、まだ高速道路を運転して帰るんでしょう?お気をつけて」
「そうだね」
「じゃあ」
「はい」
彼女と別れて帰路に着くのであった。
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