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「祥太郎、明日おばあちゃんの病院行ってくるけん、夕方の船で帰ってくるね」
「うん、おばあちゃんによろしく」
夜、自室で勉強していると背後から母にそう言われて、僕はぐっと拳を握りしめた。
まだ母にすら告げていない僕の小さな決心に、母は反対するだろうか。
それとも、馬鹿なことを言うなと笑い飛ばすだろうか。
「あとさ、」
「ん? どしたん?」
振り向いた僕の顔は、母の目にどう映っているだろうか。
僕は、おばあちゃんが大好きで。
もし出来ることならおばあちゃんが生きている間に、大好きなものを沢山食べて楽しく過ごして欲しいと願っているわけで。
こんなこと、家族なら当たり前に考えることかもしれないけれど。
このまま過疎が進んで島が衰退して、本土への船の本数が減ってしまったら、とか。
島に唯一ある診療所すら閉鎖されてしまったら、自宅療養の目処すら立たなくなるんじゃないか、とか。
それなら、島を衰退させないために、僕たちは何が出来るんだろう、なんて漠然と考えていたことに。
何となく、光が見えたのだ。
昨日見た、ミチルさんのカフェで。
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