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君に会いたい。
いつもの電車。
高校の通学に電車で1時間半。遠くて疲れるけど、2年目ともなると最近は慣れてきた。まぁ授業中に寝ちゃったりするんだけどね。
俺の最寄は、とっても田舎で乗る人はほとんどいない無人駅だ。
部活の朝練があるときは5時には家を出なきゃいけない。
気の利いたベンチなども無いさびれた駅だけど、2年になってからは嫌いじゃない。
特に朝練の日は。
だって会えるから。どこの高校かわからないけど、凛とした面持ちの女子高生。
学校でも普段女子と話すことのない俺が、何故か話しかけてしまう相手。
何故か、じゃないか。
「おはよう、高梨さん」
「おはよう。今日も朝練の日か」
「うん。高梨さんもだね」
「私は毎日あるからね」
高校どこかは知らないけど、あまりが話は続かないけどこの時間が好きだった。
「何部なの?」
「吹部、吹奏楽部だよ。そっちは?」
「俺も!」
一緒だねと笑顔を作る高梨さん。
一緒の部活と言うことに、少し運命みたいなものを感じてしまった。
『まもなく、列車が到着します。―――――』
電車が来てしまった。
電車の中はガラガラで容易に座れる。俺も彼女も電車の中では本を読むため話さない。
話しかけたいと思ったこともあるけど、本を読む彼女の姿も好きだから話しかけない。
だから隣にも座らない。
それからも会う日は毎日話した。何の楽器なのか、好きな本はなにか、休みの日は何しているのかなど、他愛のない話を。
だけど、中間テストの期間になり朝練が2週間無くなった。テスト1週間前の勉強期間とテスト実施の1週間。合わせて2週間。
この2週間、高梨さんとは会えなかった。テスト期間はどこの学校でも同じくらいの時期にあるけど、同じくらいに過ぎないのでまるっきり被らなかった。中間ならなおさらだろう。
やっぱり、運命なんてないなって思った。
そして、中間テストは終わりまた部活が始まった。
月曜から部活かぁ、てことことは朝会えるかな。
部活のために早起きするのか、彼女に会うために早起きするのか。
どちらにせよ高揚感が高まっている。
だけど、彼女はいなかった。
次の日も、その次の日も。木曜は朝練は無いが、金曜日になっても会うことは無かった。
それは、次の週もその次の週も同じだった。
テスト後の高揚感もうは無かった。
もう会えないのかもしれない。そんなの、嫌だ! けど、会う方法は無い。
とてつもない虚無感。
「もし、いつか会えたら……。」
また高校に入ったばっかの頃のように、ただただ朝辛いなと思いながら学校に向かうようになった。
その時、
彼女に会えなくなって約1ヶ月。
朝練だりぃな、と思いながら改札をくぐった。そこには彼女がいた。
「おはよう高倉君、久しぶりだね」
彼女を見て、彼女の声を聞いて。感極まって泣きそうになるがぐっとこらえて言った。
「最近会えなくって後悔していたんです。何でもっと早く言わなかったんだろうって」
心臓がバクバクだ。怖い。もしかしたらもう今度こそ一生話せなくなってしまうかもしれない。
でも。
一生気持ちを伝えられないよりも全然いいじゃないか。
「好きです」
「私も」
彼女はこれまで見たことのない笑顔でそういった。
『まもなく、列車が到着します。―――――』
俺も彼女も座って本を読む。
今日からは隣同士で。
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