好き過ぎ

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友人が久しぶりに我が家に遊びに来た。 私や私の家族と遊ぶのでは無く、彼の目的は家で飼われている沢山の猫と遊ぶための来訪。 家では4~50頭の猫を広い屋敷の中で飼っているのだが、屋敷のあちら此方の思い思いの場所で過ごしていた飼い猫たちが、彼の来訪を知るや我先にと駆けよってくる。 私が抱いていた猫まで、身を捩り私の顔を蹴っ飛ばし彼の下に駆けよって行く。 チクショウー、飼い主である私や私の家族が嫉妬するほど彼は猫にモテル。 ただ彼は猫アレルギー持ちの家族と実家で同居しているため猫を飼えず、猫と遊びたくなると家に来るのだ。 群がり集まった猫たちに纏いつかれ猫玉になっている彼に声を掛ける。 「久しぶり。 最近来ないからどうしたんだろうって家族で話していたところだったのだよ」 群がる猫たちを順番に撫でながら彼は返事を返してきた。 「実は、猫たちと一緒にくらしたいとの思いから実家を出て一人暮らしを始めたんだ。 引っ越しやら転移手続きやらで伺うのが遅くなってしまってね」 「それじゃ家で猫を飼えるだね」 「ウン、それで、前に遊びに来たとき子猫が産まれていたから譲って貰えないかなって思ってさ」 「ああ、あの子たちか。 悪い、あの子たちは皆貰い手が決まっているんだ」 「そうなんだ……」 「家で産まれた子では無いのだけど引き取り手を募集中の子供たちがいるのだが、どうだろう?」 「どういう事?」 「2週間程前庭で保護した野良猫なのだが、この猫子育ての真っ最中だったらしく保護した翌日子猫を4匹連れて来たんだ」 「血統とかに拘っていないからその子たちを頼む」 私は子育て中の母猫と子猫を集めている部屋から、黒猫2匹と白猫2匹の兄弟猫4匹を連れてくる。 「この子たちなんだが」 「ワー可愛いな、皆男の子?」 「否、黒猫2匹がメスで白猫2匹がオスだよ」 彼は4匹を籠に入れ籠ごと抱きかかえ帰って行く。 それを見送る私の前には飼い猫たちが勢揃いして、籠に入れられ彼と共に帰って行く子猫たちを羨ましそうに眺めていた。 クソー。 1週間後の早朝。 目の下に隈を作り真っ青な顔の彼が我が家に現れ、玄関の前で出迎えた私に子猫4匹が入った籠を押し付け泣きながら話す。 「此れ以上彼等と共に暮らす事はできない。 すまないが、彼等を引き取ってくれ」 そう私に告げるとふらつく足取りで車に乗り込む。 「どういう事なんだ?」 私は声を掛ながら車に乗り込む彼の下に駆け寄る。 駆け寄ってくる私に彼は、「眠い、眠いんだ、寝かせてくれ」と呟き、運転席を後ろに倒し寝てしまった。 寝てしまった彼を車の窓越しに見て、私は「おやすみ」としか言えなかった。 翌朝、24時間近く眠り続けた彼を私は朝食に誘い理由を問う。 「何故だ? 何故飼えないのだ?」 「彼等と一緒に暮らすと、眠る事ができないからだ」 「寝る事ができないって? 確かに彼等猫たちと共に暮らすと此方の都合も考えずに遊びに誘われるが、彼等だって眠るのだ、その時一緒に眠るようにすれば寝られるだろ」 「一緒に眠るだって? そんな事出来るかー! あの可愛い寝顔を1分1秒でも見ないなんて事は私には出来ないのだよー」
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