ーー 2 ーー

1/2
前へ
/13ページ
次へ

ーー 2 ーー

 第三倉庫は老朽化のため近々解体される予定であり、中のものを持ち出している最中だった。といっても大半のものは移動済みで、あとは重機でなければ運べないような大型のものや、壁に取り付けられている棚などが残っているだけである。  僕は段ボールをその中心に置くと、ネズミ返しを外した。これで外に出やすくなったはずだが、どうだろう。慣れるまでは出てこないのだろうか。 「まあ、ひとまずは、これで様子見と」  つぶやいた途端、隣に眞光がワープしてきた。 「あれ? なんでこっちに」  眞光は資材課の人に言われて、猫がいたずらでもしてないか、魔法を使って確認していたはず。 「そんなもん、数秒で終わるさ。そんで、次はこっち」  どうやら山尾先輩の指示らしい。ここを猫が過ごしやすい環境にしてほしいとか。 「できるの? そんなこと」 「とりあえずやってみる。できなくても、好きな人の頼みだし、なんとかする」  珍しく燃えている。仕事も同じようにしてくれ、と思ったが、愛しの山尾先輩の業務でもミスをするのだからきっとダメなのだろう。 「あとは、こいつがここを出てかないようにするのと、遊びまわっても怪我しないようにもな」  ものが少ないとはいえ、遊んでいる最中に機器の中にもぐりこんでしまう可能性もある。当然そんなことは想定していないので、入ったが最後、出てこれなくなってしまうことだって考えられるのだ。  魔法って流石だね、そう言いながら腕を組んだ時、ポケットの中で乾いた音がした。そういえば、これを先輩たちに見せるのを忘れていた。  四つ折りにしたそれを広げる。そこにはあのお決まりの文句が……。 「あれ?」 「なんかそれ、おかしくね?」  A4の紙に、サインペンで書かれた綺麗な字が並んでいた。 『この猫を、決して可愛がらないでください』 「お茶目な書き間違い?」  眞光が問うが、僕は首を傾げることしかできなかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加