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「なにかご存知なのですね?」
彼はほんの少し躊躇いの色を見せてから、
「ええ。実は見たんです。警官の制服を着た人が、男の人を刺すところを。動画も撮ってあります」
「本当ですか?それ、確認させてもらってもよろしいですか?」
「もちろん」
男はドアを大きく開くと、こちらにも見えるようスマホを手に持った。
動画の再生が始まる。
路地の奥、警察官の制服を着た男とジャージ姿の男。画面が小さいせいで顔までははっきり確認できない。やがてジャージのほうがナイフを取り出し、それを奪った警察官が逆にジャージの腹を刺した。
そこで男は動画を一時停止させた。
「ちょっと拡大してみます」
二本の指で画面に触れようとした彼が、そのままの体勢で固まってしまった。
それは仕方のないことだろう。彼の胸にはナイフが突き刺さったのだから。
まあ、刺したのは私なのだが。
彼の代わりに画面を拡大してやった。
そこに映っていたのは、まぎれもなく私自身だった。
制服を着ていたからと言って警察官とは限らないのと同じように、バッジを持っていたからと言って刑事とは限らないのだ。
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