我に力を

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 一応地上でもう一度やってみたけれど、スケボーに乗りすぎたのか膝ががくがくして教わった時の様に行かない。  これ、間に合うのか?  間に合わせるんだ!  僕は勝手にお姉さんが激励してくれる様子を思い浮かべて自分を鼓舞した。  そしてやっているうちにありありと理解して行った。 「この技、初心者向けなんかじゃない。とんでもなく高度な技だ」  だいたいアイリッシュダンス自体が素人にそうそう出来るものではないのだ、それに近い動きをスケボーを操りながらするって人間業じゃないだろこれ! お姉さん凄すぎます! 今まで以上に憧れます。  心が折れそうになるのと同時にお姉さんへの思いが強まってなんとかバランスが取れた。  僕は再び気合を入れてボードに乗った。  何度も転びながらもボードに乗るだけならなんとなく形になって来たけれど、問題はその上でステップ踏んだり跳んだりする事だ。  やるさ、やってやる! やってやるとも!  僕は一晩中すべっては跳ね、跳ねては転び、転んでは立ち上がって何度も何度もボードの上で踊ろうとした。  いつしか僕の体は羽根の様に軽くなり、思うがままにステップを踏める様になった。ボードの描く軌跡はお姉さんのそれと比較してもさほど劣らぬ程になり、その上で小鳥のように僕は飛び跳ねた。
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