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涼しい風が川の流れに沿って頬をくすぐって行く。
日中は確実に卵が焼けるアスファルトのサイクルロードもひんやりとしていてどこか心地よい。
今日と言う生まれたての日を照らす朝日を浴びて僕は河川敷公園に立っていた。
お姉さんの姿はまだない。
僕は早速練習を始めた。
熱を帯びていない地面の上を運命のボードが転がる。
スイ スイ スイ……
おお、走れるじゃないか。
試しに課題のS字を描いてみる。 …… まぁ Sに見えない事も無かろう。
あとはこれをしながらのダンスだな。
地上で試してみる。あっているとは思うけど、お姉さんの様に妖精を思わせる軽やかさが無いかなぁ?
ああでもないこうでもない、夢中になっていたから余計にだった。
「おはよう」
その可憐な声に過剰に驚いた僕をみてころころと笑うお姉さん。ああ、何て美しいんだろう。なんかいい匂いするし。ただこれだけで胸の中に熱が生まれそれがじんとした実感を伴って全身に広がって行く。
「熱心ね」
「当然です! 」
「それに、傷だらけの泥だらけね……」
指摘されて思わず赤くなってしまった。ああ、僕は昨日の服のままだ。
「すみません……」
お姉さんはくすりと笑ったが事情を察してくれた様だ。
「親御さんに心配かけちゃだめよ? 」
めっと言う顔をされる。逆に嬉しく感じてしまった不謹慎さを必死に隠す……。
そしてお姉さんは何故か一度暗い顔でうつむいた後、払拭するように微笑んで、じゃあ始めましょうかと言った。
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