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ごくりと僕の喉が鳴って、自然と顔が引き締まった。
「おお、男の顔になりましたな」
お姉さんは楽しげに言ったけれど僕は本気だ。
「まずヘルメットをつける事」
意外な発言だ。お姉さんはいつもノーヘルなのに。
「ヘルメットですか? 」
「そうよ。付けないのなら挑戦権はありません」
胸の前で人差し指でクロスを作られてしまう。
スケボー用のを持っていない僕は自転車に掛けてあった通学用ヘルメットを被らざるを得なかった。
お姉さんは可愛い可愛いと笑ったけど、明らかにミスマッチだし、歳の差があるから当然なんだけど子供扱いがちょっと悔しかった。
それでもそのなりでボードを取り上げる。
「そのボードでやるの? 」
お姉さんは意外そうに言った。
「そうです、運命のボードなので! 」
良くわからないと言った表情をしたお姉さんだけどすぐに良いわと頷いてくれた。お姉さんのボードに比べて短いのが意外だったのだろう。
僕は息を整えるとそっとサイクルロードにボードを置いた。
「頼むぞ」
そう小さく声をかける。
本当はボードに頼むのではなく僕自身でなんとかしなくてはならないのだけど。
「約束通り一発勝負ね? 用意はいい? 」
「はい! 」
大きめの声をわざとあげて全身に本気出せの合図を送る。
この美しい人とお付き合いできるかの瀬戸際なのだ。緊張して動けないなんて事になってたまるか!
「では、始め! 」
僕はボードに乗り、地を蹴った。
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