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ついと走り出すスケートボード。
児童公園よりも地面の状態が良いので思ったよりもスムーズだ。
微かに体重を傾け、S字の最初のカーブを描き始める。ここですかさずステップ開始。
右足を軽くあげ、かかとで付く、この瞬間に左はつま先立ちに……。
バランスが崩れる!
ええい! ままよ! 右腕をめいっぱい付きだしてその勢いを使って体の軸を保つ。冷や汗ものだが次へのステップに繋げられる! 危ういバランスからの次の技。
その体重移動が意外にもこれが逆に安定を生み、次にスムーズに繋がる。こんなのは初めてだ!行ける!
だがうっかりしていた。ステップは今までの中での会心の出来であってもボードが描くコースが綺麗なS字をたどっていなかった。
慌てて体重をかけ弧を描こうとする。
「あ」
お姉さんが言った。
気付くのは僕の方が後だったのだ。そう、地面に転がった後。
お姉さんの姿が逆さに見える。
まじか―……。
心が最大限の防御をしているのか、大勝負で土が付いてしまった事を実感する事がなかなかできない。何が起こったのか理解しようとしない。
ただばかみたいに逆さまのお姉さんを見つめる僕に彼女の顔がアップになった。
「ねぇ、練習は終わった? もしかして本番だった? 」
涙がこぼれた。
「まだ、です」
「そ。じゃぁ 本番だったならそう言ってね? ちゃんと見てるから」
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