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そう、踊りだけではなくて彼女自身も特別な容姿を持っていた。
風にそよぐ長い黒髪は軽やかで日の光を虹色に反射していたし、日本人とは思えぬほど良く伸びた手脚は緩急をつけるだけで驚くほどの表情を持った。
下賤な話になるけどメリハリの利いた体型もそれだけで充分人を惹きつけるだろう。
僕の持ち続けていた気持ちが恋だって分かったのは最近だったんだ。
膨らみ過ぎたそれはとうとう抱えきれなくなって、だから思い切ってそれを伝えた。
「僕とお付き合いして下さい。駄目であればせめて残りの三日だけでもお願いします! 」
毎年彼女はこの頃ここに来て四日だけ過ごして帰って行く。
だから告白できるチャンスはあまり無い。
彼女はくすくす笑った。どこか心をくすぐられる様なとても心地よい笑い方だったけれど、まともに取り合ってくれていないんだとわかった。
「君、私をからかっているの?見た所中学生よね」
やっぱりそこか。確かに僕は中坊でお姉さんは体型からして高校生、否、大学生かな。僕が子供に見えても仕方ないだろう。でも僕はこの気持を抱えたままで次回まで過ごす事が出来ないくらい思いが膨れ上がってしまっているんだ。
振られたなら振られたで良い。いや、振られるのは嫌だけど。そうなったなら思い切り悲しんで悲しみ抜いてあきらめきれずにめそめそして、その先でまたゆっくり立ち直って行けば良い。宙ぶらりんで居るのが嫌だった。
だから僕はもう一度言った。
「お姉さん、僕は本気です。僕とお付き合いして下さい! 」
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