僕と付き合って下さい

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 僕が真剣な顔を向けているとお姉さんは戸惑った様な、困った様な、何かと葛藤する顔をした。 「あのね君、申し訳ないけど私は誰とも付き合わないわ。君と私が付き合ってもお互い困るのはわかるでしょ? 」 「わかりません! 」  僕は即答した。ついさっき見たんだ。お姉さんがサイクルコースの傍らに座り込んで、そして寂しそうな顔をしていたのを。 「僕の声にお姉さんは振り向いてくれました。僕の声が届きました! 僕はこれを運命だと思っています! 」  彼女は困ったまま髪をかきあげていた。こぼれた光がぱっと舞う。 「優しい子ね。でも大人には責任ってのが付きまとうのよ。わかるでしょ? 君だって誰に声をかけているのかわかっているみたいだし」  僕は喉が詰まっていたけれどそれでも声を振り絞った。 「半端な気持ちでこんな事言うもんか! 僕だって…… 人生の三分の一もあなたの事を考えて暮らしてきたんだ! 」  彼女は少し驚いた顔をしたけれどでもねと漏らした。  そしてその後こう言った。 「じゃぁ、賭けをしましょう。君が勝ったらお望み通り残りの三日、いえ、ごめんね、賭けに一日使うから二日、君の彼女になってあげる。でも勝てなかったら、もう二度と私に会いに来ない事」 「やります! 」  条件も聞かずに即答した僕に彼女は黒目がちな目を丸くしていた。それはそうかもしれない。どう考えたってメリットよりデメリットの方が大きい。でももう思いは伝えちゃったし、二日間であってもこの美しい人が僕と過ごしてくれるのなら一生そう出来ないよりきっと良いに決まってる!  目の前の思い焦がれてきた人はどこか寂しげに微笑んで頷いた。
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