1人が本棚に入れています
本棚に追加
「帰り遅くなっちゃったなあ...」
時計を見ると23時過ぎ、年末の慌ただしさで毎日残業続きだった。
家の近くまで歩いてきてやっと休めるって思った矢先に「そ...な...ね..」って途切れ途切れに声が聞こえたわけ。「んわっ...!?」って変な声出たよ。
だってこんな時間に人が出歩く程都会じゃなかったからね。でも気になったんで耳立てたらどうも公園の方から聞こえんのよ。
怖いもの見たさって言うのかな、こっそり近付いたわけ。そしたら蛍光ライトに照らされたベンチに誰か座ってんの。少し小さくて最初は小学生くらいかなって思ったんだけど、良く見たらおばあちゃんなの。ホッとしたんだけど何でかすんごい薄着なわけ。ポンチョって言うのかな、何か忘れたけど取り敢えずすっごい薄着なの。それでタオル頭に巻いてさ。夏に田植えしてる田舎のおばあちゃんまんまの格好でさ、さっきのブルっちまった心なんて一気に消えたよ。「ばあちゃん、そんな格好じゃ病気なっちまうぞ〜」って心配して声掛けたんだけどさ、何かブツブツ話してんの。
「元気そうねぇ、うんうん、私も元気よ!でも畑仕事で腰が痛くってねぇ...」とか「〇〇はもう小学生だもんね、早く顔みたいねぇ...」とかそんな事話してるの。遠目では分かんなかったんだけど丁度見えない方の手に携帯持ってて息子だか娘だかと話してんだよ。
何だよ、驚いたじゃねえかぁって心の中で愚痴りつつ「ばあさん、ホントに風邪引くって!家まで送ってくぜ?」って言ったんだけど全く聞かないどころかこっちすら見ないわけ。ちょっとカチンとして「ばあちゃん!今からすげぇ冷え込むんだぜ!おーい!」ってまあまあ耳元で話しかけたわけ。耳元で言ったからばあちゃんの話し相手の声も聞こえたんだ「この電話は現在使われておりません、この電話は現在使われており...」って。
そっからは怖くて逃げるように家に帰ったよ。
少なくとも10分は自動音声に話し掛けてたよ。
最初のコメントを投稿しよう!