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遠目でも分かるスラっと長い足に、筋肉質な細身の体型、短髪の姿は男性に見えるが、声の高さなどを踏まえてよく見ると、ボーイッシュな女性にも見える人だ。
「え……っと……?」
足音を立てて保健室に入ってきた相手は、懐かしいなぁ、と呟きながら、辺りを見渡している。
物陰で色々と探していた竹根が顔を出すや、あら、と声を上げた。
「嘘!? 何でここに……」
「おー! しゅーりせーんせ! お久しぶりー! あんまり変わってないんじゃない?」
「もう……相変わらず口だけは達者ね。貴方が卒業して、まだ2年目でしょ。そう簡単に変わってたまるもんですか。」
呆然と2人を見つめる自分と拓翔に気が付いた竹根が、こちらに向き直った。
入ってきた男性は、特にこちらを気にする様子もなく、保健室の色々なところを見ている。
「彼は、辻永くん。下の名前は個人的に聞いてあげて。自己紹介の時に自分で言う以外は、呼ばれることを毛嫌いしているから。あんな人だけど、ここを首席で卒業した、とんでもない頭脳のOBよ。かつて伝説とも言われていたから、相当よね。」
辻永、と紹介された男性は、相変わらずあまり刺激性の無いアルコール使ってんの? など、普通なら見ないようなところを回っている。
「えっと……僕を探していたみたいですが……」
「ん? あぁ、そうそう。チラッと聞いたんだけど、君、事件の目撃者なんだよね?」
頷くと、ベッド柵に腰掛けた辻永が、静かに微笑んだ。
「俺は辻永。下の名前は鈴夢、辻永鈴夢。ま、探偵だと思ってくれ。」
探偵だと思ってくれ? 不自然な言い方に首を傾げていると、鈴夢が静かに続けた。
「君、俺のアシスタントにならないか。」
一瞬、何を言われているのか分からず、呆然と鈴夢を見つめることしか出来なかった。
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