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「アシスタント? 僕が……貴方の?」
そう言ってるじゃないか、と言わんばかりの顔で頷かれても、こちらからしたら困惑しかない。
チラッと拓翔を見ると、意外にも落ち着いて相手を見ている。会ったことあるのか、と聞こうとした時、鈴夢が口を開いた。
「君、捜査一課で警視長やってる、城上さんの息子だろ?」
何でそれを……思わずそう呟くと、鈴夢の視線が拓翔に向いた。
「城上拓翔……ピアニストとして活動してるけど、大分前のインタビューで、弟を養うために調理師免許を取ったとして有名になってた人だ。それに、俺の大学にピアノの演奏で来たこともあるし、個人的にも少しだけ話したことがあるんだ。だから君のことは名前だけ知ってんの、白夜くん。」
楽しそうに話す鈴夢の視線がこちらに戻る。
「現場の情報さえあれば、何かヒントが得れるかもしれない。だが、俺はここのOB……出入り出来るとはいえ、すぐに現場へ来れるわけでもない。」
「え、まさか……」
「お、気が付いた? 俺は、この事件が今回で終わりだなんて思っちゃいない。絶対に次も起きる。いわゆる探偵としての勘ってやつ。だから、その時に君が現場を見れるだけ見てほしいんだ。」
いや、現にこうやって倒れているじゃないか。そう言おうとするが、脳裏に浮かんだ父親の姿を思い出す。
きっと、この事件にも関わる父親。もう少しお前達といたいんだが……と寂しそうに笑っていた父親。
もし自分がここで協力すれば、父親のことを少しでも助けられるかもしれない……その思いが勝った。
「分かりました、やらせてください。」
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