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4月。
咲き誇る桜から、数枚の花弁が風と共に舞い落ちてくる。木漏れ日の中、私立と呼ぶにふさわしい壮大な門を抜け、しばらく歩くと、目の前に時計塔や大きな校舎がいくつも見えてきた。
私立風和高校。偏差値は高いものの、部活を見れば強豪揃い、設備を見れば一言では言い表せない程に充実、その上美味しい学食と来れば、倍率は毎年群を抜いてトップクラス。
まさに小説に出てきてもおかしくない、言うなれば「夢のような」高校だった。
「おはよう! クラス発表あったね。私C組。」
「嘘! C組!? 一緒だー!! またよろしく!」
賑やかな声は、2年生や3年生の昇降口の方から聴こえてくる。
自分が向かう1年生の昇降口は、どちらかと言うと、新生活への不安と緊張が入り混じった空気でいっぱいだ。
ちらほらと同じ中学校出身の人とクラスを確認し合う姿もあるが、自分はそんな存在など無い。
そもそも、父親の異動で受験をする前から引っ越しが決まっていて、わざと通いやすい高校を受けたのだ。まず知っている人はいない。
クラスを確認するや、磨き上げられた昇降口で新品の上履きに履き替え、足早に教室へ向かった。
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