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ゆっくりと上がっていくエスカレーター、所々にはめられた小さなステンドグラス風の窓、談笑しながら階段を下っていく生徒達、段ボール片手に、焦った顔でエレベーターを待つ教員……伝統的なブレザーの制服に、校内の景色が合っている。
お坊ちゃまやお嬢様が通うような高校では無いのに、不思議と胸を張りたくなるような、上品さが漂う学校。
この後行くと言われている講堂は、教会をイメージしたと言われている。この学校が誇るもの、と謳っているほどだ。かなり綺麗なのだろう。
カラーン、カラーン……と、時計塔の鐘が鳴る。雑踏に紛れ、ゆっくりと自分のクラスであるA組を探し、ドアを開けた。
笑顔の生徒、少し緊張気味の生徒……多くの人がいる中、ざわめきに負けじと、しばらく鳴り続ける鐘の音。
窓から見上げた空は美しく晴れ渡り、息を吸い込めば、冬特有の鼻の奥を刺す冷たい空気ではなく、わずかに花の香りと温もりが混じった春の空気が入ってくる。
きっとこの高く透き通った音と清々しい春の空気は、普通ならば心地よく感じるのだろう。
本能的に嫌な予感がしているのは、自分だけだろうか。
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