File.0  プロローグ

3/4
前へ
/162ページ
次へ
 ゆっくりと上がっていくエスカレーター、所々にはめられた小さなステンドグラス風の窓、談笑しながら階段を下っていく生徒達、段ボール片手に、焦った顔でエレベーターを待つ教員……伝統的なブレザーの制服に、校内の景色が合っている。  お坊ちゃまやお嬢様が通うような高校では無いのに、不思議と胸を張りたくなるような、上品さが漂う学校。  この後行くと言われている講堂は、教会をイメージしたと言われている。この学校が誇るもの、と謳っているほどだ。かなり綺麗なのだろう。  カラーン、カラーン……と、時計塔の鐘が鳴る。雑踏に紛れ、ゆっくりと自分のクラスであるA組を探し、ドアを開けた。  笑顔の生徒、少し緊張気味の生徒……多くの人がいる中、ざわめきに負けじと、しばらく鳴り続ける鐘の音。  窓から見上げた空は美しく晴れ渡り、息を吸い込めば、冬特有の鼻の奥を刺す冷たい空気ではなく、わずかに花の香りと温もりが混じった春の空気が入ってくる。  きっとこの高く透き通った音と清々しい春の空気は、普通ならば(・・・・・)心地よく感じるのだろう。  本能的に嫌な予感がしているのは、自分だけだろうか。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加