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File.1 事件の始まり
長々しい入学式、多すぎる書類を何とか乗り越えると、高校生活がスタートする。
入る前から調べていたとは言えど、やはり通い始めると、普通の高校とは違いすぎる豪華な設備に圧倒される。
おかげで何度も迷うが、元々人付き合いが得意という方でもなく、いわゆる「ぼっち」の状態で、学内地図と格闘する日々。
授業は難なく着いていけるし、分からない時は家に教えてくれる存在がいる。体育も苦手すぎるというものではない。この先にある行事も楽しそうな物ばかりで、中学とはまるで違う。
だが、何より……周りに誰もいないという状況が辛い。
(単独行動ってこんなに心細かったっけ?)
そう思う昼休み。早めに音楽室を探す。
だが、ふと顔を上げれば、目に映るのは「3A」などの文字。つまりここは、紛れもなく3年生のフロアだ。
(うわ、まだ先輩と面識も無いのに……どうしよう、音楽室ってどこ?)
地図を見れば、音楽室自体はこの3年生のフロアにあるらしい。
だが、元々H組辺りまである、大きな学校だ。フロアに辿り着けても、次は目当ての教室を探さないといけない。
焦りが勝り、地図に注目していたのがいけなかった。
突然身体に走った衝撃と共に、思いきり後ろへ倒れる。しばらくして、腰あたりにじんわりとした痛みが広がった。
「ごめん! 前見てなかった……大丈夫?」
上から降ってきた中音域の声に顔を上げると、焦った顔の男子生徒がこちらを覗き込んでいた。
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