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「音楽室の扉を開けたら、ってことか。」
「はい……。」
叶翔が横に付き添ってくれているのが分かる。静かに警察の聴取を受けるが、ショックが大きすぎてあまり話せない。
被害者は、1年生の女子だったらしい。つまり同学年。
それだけでも結構堪えるというのに、警察の「首が無い」と言っているところを聞いてしまい、さらに想像してしまったのが痛い。
「う……」
「白夜くん? 大丈夫?」
そっと顔を覗き込んでくれる叶翔へ、返事を返す余裕も無い。絶えず吐き気が襲ってくる。
「真っ青だね……ちょっと保健室連れて行きたいんですけど……、もういいですか?」
頷いてくれた警官を横目に、足早に離れた。
ふらつく自分を見かねたのだろう、叶翔が背負って走り出してくれるのを感じつつ、ぼんやりと滲んだ風景を見ていた。
(同級生が亡くなったってことか……。)
あの時、入学式へ出席を共にした者が、1人消えたことになる。
別に、特段親しい友人になるなど……そういうことは無くとも、行事等で関わる機会もあったかもしれない。
(生きたくても生きれない人だっているんだぞ……。)
1人、大切な人の顔が浮かび、目を閉じた。
今にも溢れそうな涙を、ただ堪えることしか出来ない自分が情けなくて、更に泣きそうだった。
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