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「1年A組、城上白夜くん、っと。まさか1年生で最初の生徒が、こんな形で来るなんてね……災難だったわね、城上くん。」
養護教諭は、若い女の先生だった。
胸元を見ると「風和高校 養護教諭 竹根珠理」と書かれている。
「あ、はい……ありがとうございます……。」
横になったまま、冷や汗をかいている自分の額を拭っていた竹根の顔が、こちらを心配そうに見つめている叶翔の方へ向いた。
「岩浪くんもありがとう。音楽室って、3年生のフロアだもんね。」
「そうですね。実は……白夜くん、音楽室に行こうとして迷っていたみたいで。目の前まで送って行った僕が、運良く傍にいたんです。」
ぼんやりとその会話を聞く。
そう、そうだ。叶翔がもしいてくれなかったら、自分は1人であの惨状に遭遇していたことになる。
呆然と立ち尽くす自分を、咄嗟に抱きしめて何も見えないようにしてから、すぐに近くにいた生徒に先生を呼ばせ、警察に通報するように叫んでいた叶翔のことを思い返すと、感謝しかなかった。
「岩浪くん、申し訳ないんだけど、1Aまで行って、城上くんの荷物取ってきてあげて。そろそろお兄さんが来てくれるはずだから。」
頷いて出て行った叶翔の足音を聴きつつ、ぼんやりと天井を見つめていた。
何も考えたくない。音楽は大好きなのに、この事件のせいで、音楽自体がトラウマになりそうだった。
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