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File.0 プロローグ
某所にある、何でもない住宅地。
その中にある一つの家の中、真っ暗な部屋で光るパソコンの画面を見つめ、一心不乱に検索を続ける人物の姿があった。
(風和……私立高校……事件……)
外からは、酔っ払いの大きな声や、縄張り争いをする猫の鳴き声が聴こえてくる。
だが、キーボードを叩くその手が止まることは無い。
やがて、エンターキーを押すと共に表示されたのは、多くの記事。その内容はどれも同じだ。
息を詰めてしばらく画面を見つめた後、不意に手元にあったグラスを壁に叩きつけた。ガラスが砕ける音、中に入っていた飲料が床に落ちる音が響き渡る。
闇の中、頼りになるものはパソコンの画面から発される、白い光のみ。湧き上がる激情を抑えようと、光を見つめながらしばらく立ち尽くす。
やがて小さく息をつき、部屋の電気をつけた。
眩しさに目を眩ませながら、砕け散ったグラスの残骸には目もくれず、机の上を見る。
何重にも文字が折り重なったノートが、無造作に広げられている。何年もかけて試行錯誤してきた、復讐劇の台本だ。
徐に手に取ったスマートフォンの待ち受け画面を見ると、笑顔の自分と肩を組む、笑顔の男子が見える。
しばらく見つめてから、画面をオフにして、ギリッと歯を食いしばった。
あの時の絶望は、何年経とうと薄れることは無い。全てが壊されたあの日から、ずっとこの復讐劇を考えてきたのだ。
食いしばった歯の間から、絞り出すような掠れた声が、部屋の中に響き渡った。
「全ては……兄さんの無念を晴らすため……。」
必ず、復讐を遂げてみせる。
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