Pietà

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 お父様は教会のオルガニストだった。小さなオルガンで、みんなが歌うのに合わせてオルガンを弾いていた。お父様がオルガンを弾いている間は、隣の家のおば様の家族と一緒に礼拝に参加していた。礼拝の最中、私はいつも手をぐっと握りしめ、涙を堪えてお父様をずっと見つめていた。お歌は楽しくて、一緒に歌いたがったけど、お歌を歌っていいのは男の人だけだった。礼拝中は泣かないように気を張りつめているけれど、礼拝堂から出るとすぐに涙が溢れて仕方がなかった。どうしてお歌を歌ってはいけないの? そう言って泣きじゃくる私を、おば様はいつも(なだ)めていた。  オルガニストの仕事は、賛美歌の伴奏だけではなくて、前奏から始まって後奏で終わる。後奏の間に牧師様は退場されるから、お父様が出てくるのはいつも最後だった。お父様はいつも走って私を迎えに来てくれた。お父様の胸の中はいつも暖かくて、私はより一層激しく泣いていたの。
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