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【episode5】働く
「迷ってもいいんだよね。」
娘が私の顔を覗き込む。
長きにわたって、安定した大手企業の正社員、または公務員として働くことこそ素晴らしいとされていた。
だが、ここへきて時代は多様性を見せはじめている。
大手企業が倒産し、今まで当たり前のように雇用され通勤さえすればもらえていた給料の保証はなくなった。
働き方はテレワークとなり、人との繋がりという糸が、いとも簡単に切れてしまった。
そして、時代の流れとともに自身の個性を生かし活躍する人に光が当たり、それに伴い『天職』や『生きがい』などを求められるようになったことで彷徨える人が増えた。
急に個性を求められても打ち出せる人ばかりではない。
故に、自身の将来が見通せない人が夢を持ってキラキラとしている人を見ると焦りを感じ、自分が何かダメなように感じてしまうのである。
若い頃から自分の才能に気づきなんの迷いもなく突き進める人は素晴らしい。
だが、そんな人ばかりでないのが実情だ。
しかし、人は迷いの中で得るものがある。
迷って彷徨ったからこそ人の気持ちを思いやれる人になるのだ。
人生に無駄なものはない。
遠回りをしても良いのである。
私自身も迷い彷徨いながら49の職務を渡り歩いた。
そんな母をカッコいいと言う娘に感謝する。
そして、今日も私は自身の才能と個性を活かせる天職を探すのである。
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