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美少女が立っていた。
金髪碧眼。北欧系とでも言うのだろうか、少し吊り目ガチの瞳は大粒で耳が長ければファンタジーに出てくる幻のエルフでは無いかと錯覚してしまいそうなほどに完成されていた。
身長は150センチ前後か少し小さめで、肉づきはスラっとして全体的に細めの身体に小顔な頭が乗っている。
それはいっそ非現実的な美しさとも言えるほどで、現代日本でこれが見えるということは恐らくは何かの幻覚症状かまだ夢の中に違いない、と佐貫は思った。
大学生である葉木佐貫が聞き慣れない声を聞いて深夜バイト明けの眠気まなこを押し上げて布団から見上げてみれば、そこにいたのがこのリアリティに乏しい美少女だった。
「助けてくれ……」
しかも助けを求めている。
これは間違いなく夢だと佐貫は確信した。
異世界のお姫様が召喚魔法とかで世界を救ってとか助けを求めてくる流行りのアレだ。古くはスター◯ォーズのレイ◯姫でもいい。
流行りというにはそろそろ周回遅れになりつつある気もするが、確かに昨日寝る間際に見ていたアニメもそんな方向性だったなと思いながら佐貫は再び目を閉じた。
夢の中でも美少女が拝めるのはありがたいが今は眠気の方が強かった。バイトが終わったのは午前四時だし、今日はなんの講義も入っていない。いくらでも惰眠を貪れる特権を行使しない理由は無い。
「すまないが、世界救済の勧誘は間に合っているんだ。一昨日来てくれないだろうか……。むにゃ」
「いやいやいや、なに寝ぼけたことを言って、って寝るなー! 起きてくれー!」
大分口調の悪い異世界姫様のようだ。淑女教育をやり直した方がいいと思う。
それに昨日見たアニメは、確かほいほい美少女に釣られていったものの姫は偽物で魔王対魔王の覇権戦争に巻き込まれて、滅亡寸前の人類を救うには魔王軍を内部から操って共倒れさせるしかない、とかいう割と絶望ハードなストーリーだったはずなので、ここで夢の勧誘に乗る気にはなれなかった。
偽物でも優しかった姫風魔物が三話で頭から貪り食われるシーンはトラウマものだったのだ。
そんな事を思い返しながら頑なに布団の傍らに立つ夢の存在から目を背けようと寝直しを試みる佐貫。
だが耳に響く甲高い声の妨げのせいでなかなか意識を落とせない。その苛立ちの中でようやく彼は気付く。
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