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「んもぉぉぉ!わたしどうじだらいいんれすかぁぁぁ!!」
「山田大丈夫だって!お前もう十分がんばってるって!」
「おい誰だよ、山田に飲ませたの笑」
バイト終わりにその日のシフトメンバーで飲みに行った。全員大学生で年も近いから気兼ねしない。
「こんらに好きらのにぃぃぃ・・・全っ然わかってくれらい!!」
「うんうん。そうだなー。山田はすごいなー」
「いやシバさん、もうちょっと心込めて慰めてあげて下さいよ・・・なぁ?竜崎」
「すいませーん。生中おかわり下さい」
「オイ!」
その日は俺を含めた4人で飲んでいた。
彼氏としょっちゅう喧嘩しては泣き出す山田。
見た目はチャラいが結構世話焼きなナベちゃん。
ひたすら静かにビールを飲み続ける竜崎さん。
そして俺。
喚く山田を宥めるナベちゃんを見ながら、斜め向かいの竜崎さんを見る。
そういえば、一緒に飲むのは今日が初めてだな。
「じゃあ俺は山田を駅まで送って帰ります・・・」
「お~ナベちゃん任せた~」
ようやく落ち着いた山田を連れて、ナベちゃんが席を立った。俺はへべれけで手を振った。
ふーっと落ち着いた時に気付いた。
竜崎さんと2人きりになっていた事に。
(2人きりも、初めてだな・・・)
「・・・おかわりします?」
向かいの竜崎さんが尋ねた。
俺は「うーん」と唸りながらメニューを掲げて、考えてるふりをする。ちらりと竜崎さんを盗み見る。
鎖骨までの長さの髪を片方に流して、気だるげに息を吐いている。首は白く細長い。
(竜崎さんみたいなタイプの女子・・・あんまり回りにいなかったかも)
山田みたいな可愛いけど、良く言えば明るい、悪く言えばやかましい娘はバイト先にも結構いるけど。
物珍しいからか、何となく観察してしまう。
「柴田さん、決まりました?」
「・・・竜崎さんて、なんか良いよね」
しん、となった。
竜崎さんの顔を見ると、びっくりしたような顔をしていた。アルコールの回った思考は「自分の思った素直な事」を優先させて口から溢し続けた。
「いや、なんか・・・首元キレーだなって・・・」
「・・・はぁ、どうも」
「竜崎さん・・・彼氏いんの?」
「・・・柴田さんは彼女いるんですか?」
「おれいなーい。去年ふられたばっか・・・」
そう言ってテーブルに額を押し付けて唸っていた俺。頭に優しく何かが乗った。
竜崎さんが俺の頭に手を乗せて、優しく撫でる。
顔を上げると、竜崎さんと目があった。
竜崎さんも酔っているのか、目がとろんとしている。
頭に乗せられた手を握り、自分の顔に寄せて小さくキスした。
竜崎さんの指先がぴくっと震えた。
少しの間お互いを見つめ合い、席を立った。
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