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少年は一心に上を見つめて、険しい岩肌にとりついていた。
振り返れば、その高さに心が折れるのは解っていた。
ひたすら全身全霊で神経を研ぎ澄まし、指先とつま先で
あるかないかの岩の突起やくぼみ、亀裂を探し出して
つま先を乗せ、指を押しこみ、体を上へ上へと押し上げていった。
時折ゴオオッと音をたてて、風が吹きあがる。
その度にしがみついている岩肌から体をひきはがされそうになる。
少年は浅く息を吐きながら、
いっそ手を離して、
落ちてしまった方が楽なんじゃないかという誘惑とも戦っていた。
体が熱くだるい。
不快な汗が額と背中を伝う。
足も腕も攣れたように痛み、小刻みに痙攣している。
体を支えるどころか、腕をあげているだけで苦痛になって来る。
顔を歪め瞳を閉じると、何かを振り切るように頭を振った。
だめだ。僕は見つけるんだ。
必ず見つけるんだ。
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