新たなる日

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再び目を開き見上げると、オーバーハング気味の岩が頭上にかぶさり、 崖上は見る事が出来ない。 斜めにルートを取り直し、ふたたび少年は壁にとりついたヤモリのように 慎重にゆっくりとだが着実に上へと向かう。 ようやくそそり立つ崖の頂上に指先が届いた。 少年の心臓も頭も、もう破裂しそうにどきどきと脈打っている。 ここで落ちたら・・。指先の岩が崩れたら・・。 登っている時以上の恐怖が、手足を強張らせる。 少年は大きく息を吸って、呼吸を整えた。 はずみをつけて最後の足場の岩を蹴ると、崖に上に転がるように身をあげた。 そのまま仰向けに倒れこむと、抜けるような空の青さが目を射る。 澄んだ大気には果物の甘やかな香りが満ちている。 「よし・・。よし・・・。」 少年は自分を励ますように疲れ切った体を無理やり起こすと 崖の上にはただ、無限に広がってみえる果樹園が静かに開かれていた。
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