新たなる日

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どのくらい歩きまわっただろうか、 少年はようやく一本の木の下に立ち止った。 「見つけた。君だ。」 その声に、微睡(まどろ)んでいた金色の子供が目を開いた。 「あれぇ?僕だ。」 少年は微笑んだ。 「そうだよ。僕は君だ。やっとみつけた。 君は僕の魂のコア。 僕と君がひとつになって、 やっとまた僕らはひとつの命になり、地上に生まれる事が出来る。」 光の子供がつぶやく。 「僕、ここ結構すきだったのになぁ。戻るの嫌だなぁ。」 少年は少し微笑んだ。 「わかるよ。」 少年は手を伸ばすと、金色の子供の小さな手をとって木の上から降ろした。 金色の子供は大きな瞳をにこにこと細めて、少年の元へと降り立った。 「仕方ないね。待っている人がいるんだね。」 少年は黙ってうなずいた。 金色の子供はちょっと名残惜しそうに自分のいた木を見上げると、 「また戻って来る時まで、待っていてね?」と、 優しく木の幹を慈しむように、ぽんぽんと叩いた。 それに応えるように、林檎の木は風もないのに枝をゆすって、 実をひとつぽとりと少年の手に落とした。 その実は輝く紅玉(ルビー)のような色で、 たちまち辺りはその神々しいばかりの香りで満ち溢れた。 「ありがとう。行くね?」 金色の子供は少年の手の中の林檎に手を置くと、 ふいに吸い込まれるように消えた。 少年はその林檎を胸に抱くと、紅玉(ルビー)の輝きはますます強くなり、 金色の小さな太陽のようになり、ゆっくりと少年の胸を貫いた。 少年はその場に倒れこむ。
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