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すううっと意識が遠ざかってゆく。
その最後の一瞬、少年は懐かしい少女の顔を想い浮かべた。
優しい愛おしい大切な笑顔。
「待っていて。」
「必ず。必ず見つけるから。僕が・・。」
少年の体が薄く消えてゆく。
新たなる旅の始まり。
新たなる試練の始まり。
もがき苦しみ、嘆き泣き叫びながら、
それでもたった一人の大切な人を護るために。
仲間を支えて共に生きてゆくために。
よりよい未来を託すために。
いつか真の歓びを手に入れるために。
果樹園の入口の巨大な二本の木に、
それぞれ見た事もないような姿の巨大な鳥のようなものが、
ひっそりと宿っていた。
その驚くほど見開かれた二頭の門番の瞳が、
やがて再び静かに閉じられる。
風は凪ぎ、果樹園に再び静寂が訪れた。
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