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目覚めると、いつかに見た物と全く同じ光景があった。
それが見えただけで無意識に笑ってしまう自分が可笑しい。
「おとう、さま」
今度は随分と眠ってしまっていたのだろうか。声が掠れてしまっている。それでも小さく私が呼びかけた声に、私の手を握っていた父はぱっちりと目を覚ました。
「冬花……、お前は」
「おとう、」
「水を、まずは水を飲みなさい」
しゃがれた声を聞いた父が、慌てた様に水を差しだしてくる。それに抗うことなく喉を潤して、父がほっと息を吐くのを見た。
「お前はいくつ私の寿命を縮めるつもりだ?」
「ごめん、なさい……。こはる、は」
「小春はつい少し前、部屋に戻ったところだ。お前が倒れてから、この部屋に入れないなら廊下で生活すると言い始めて酷く苦労したんだからな」
「それは、ふふ、ごめんなさい。お父様が困っているところを見てみたかったわ」
「何を言う。私はいつもお前の方に手を焼いているだろう」
「あ、そうでしたね……。また心配をかけてごめんなさい。きっとたくさん眠っていたのね? お父様、また隈が酷くなっているわ」
「一週間、目を覚まさなかったのだぞ」
「そう、でしたか……。随分眠っていたから、体が軽いわ」
「嘘を吐くな。軽いとしたら、十分に食事を摂っていないからだろう」
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