香に匂ひける

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いつもと同じく柔らかに微笑んだ彼が手を差し伸べる。 「行きましょう」と呟いて、私の行く道を照らし出した。 きっと、この先の未来に私は何度でも彼のこの日を思い出すことだろう。雛菊と、一輪のパンジーの香りに包まれた、しあわせの記憶の1つだ。 「冬花」 「はい?」 「ぼくの一生をかけて大切にさせてください」 その幸福を、人は愛と呼ぶのだろう。
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