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店には10のテーブルがあり、それぞれが4~6人のグループをつくっていた。誰もが腰や背中に武器を備えている。中には顔や腕に傷痕がある者もいる。
冒険者たちを相手に酒や食事・宿を提供する店だ。
まだまだ明るい時間だが客たちはすでに酒を飲んで楽しんでいた。
それを避けるようにして一人の女の子が座っていた。
この場に明らかにふさわしくない年齢と容姿。
真っ赤な髪と真っ赤な服のせいでさらに目立つ存在だった。
酒を飲む屈強な男たちも気になるようで誰もがチラチラと視線を飛ばす。
奴隷として売っちまえと冗談を言ってガハハと笑って酒のつまみ程度にしているのならまだいいが、その少女をなめるようにして見ている男がいた。
客の中でも一番体格のいい大男。立派な髭を蓄えている。
男は「たまらん」といって、酒をグビッと飲み干すと立ち上がった。
同じテーブルの仲間たちが「ありゃ~」と呆れ顔になり、「悪い癖だ」「またロリが出た」と頭を抱える。
髭男は赤い髪の少女のところへ行くといきなり後ろから肩を抱いた。体格差で少女の小さな体は髭男にすっぽりと包まれる。
「お嬢ちゃん。遊ぼう。部屋を取ってやる」
有無を言わさず、すでに自分のものとしたかのように満足気な表情を浮かべながら、かわいらしい顔に髭をこすりつける。
「俺のペットにしてやってもいいんだぞ」
男はさらに体に力を入れる。小さな体がそのまま押しつぶされてしまうのではと心配されるほど。
少女は怖がっているのか体を小刻みに震わせる。自らを守る唯一の手段であるかのように顔をうつむかせる。
髭男はその様子に気を良くしたようで、下品な笑みを浮かべる。
その顔を少女の両手が掴んだ。
少女は髭面を抱えたまま立ち上がっていた。
驚くことに小柄な少女は自分の体を包み込んでしまう大きさのある男の髭面を、自らの頭上に持ち上げていたのだ。
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